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F.S.S.DESIGNS4感想23―フィルモア(3)

Category : F.S.S.
ネタバレあるので、連載をまだ読んでいない人、単行本派の人、映画『花の詩女』未見の人は注意。
基本的には「デザインズ4」の見出しごとにメモ。



■帝国元老院
組織の腐敗
フィルモア帝国元老院についての解説文。
いくつか前の感想文の中でも記したけど、近年の永野護の文章には「組織の腐敗」というモチーフへの執着がみられる。それはこの解説文の中でも繰り返されている。

皇帝などが一般国民の選挙で決まってしまえば民主議会政治の最大の欠点である「選挙はただの人気投票」になってしまうからである。国家の財政や外交や福祉など、国民に調子のよいことを言う人間が代表になってしまうのである。これでは国家が腐敗するのだ。
(p106)


ここで説明されているのはようするに「国民はアホだからエリートだけで話を進めます」という考え方だ。そういえば、かつて永野護がソープ♀に言わせたセリフに「なんのための選挙権!?」というのがあった。ソープ♀のあのときのセリフは国家をきちんと監視しない国民に対する憤りであり、それは国民への期待の裏返しでもあったと思うのだが、件のフィルモア解説文では国民への期待はゼロにちかい。この温度差に過去と現在の永野護の日本国民に対する視線の変化が反映されているとみてよいのだろうか? といっても、永野はアホに選挙を任せないフィルモア方式を礼賛しているわけでは多分ない。むしろ永野が支持するのは聖宮ラーン方式(詩女の交代と同時に神官もすべて交代)だ。

そんな感じで、F.S.S.ってわりと国家システムをめぐる物語という側面もあったりする。主役国家(A.K.D.)がそもそも「神様が治める国家」という異常な設定なので、作者としてはその対比として「異常ではない普通の国家」も描かざるを得ないし、そうして自然とF.S.S.は国家論の物語になっていくのであった。ちなみに今後のF.S.S.は理想の君主をめぐる物語にもなってゆくらしい。古いインタビューのなかで永野は、第6話で3人の君主を比較することで誰が良き君主かを描き出す、と言っているので(註)。3人というのはダイ・グと斑鳩とあと一人であるらしい。理想の君主も、国家も、ロボットも、美少女も、戦争も、伝説も、童話も、美味しいお菓子も、作者はすべて一人で描ききりたいらしい。欲張りすぎでしょ、って今更か。
 (註)ニュータイプ2004年7月号インタビュー

司法長官アルク・レーダー
バルバロッサ家を含む元老院は国家運営の強い決定権を持っている。ただし、フィルモア皇帝が元老院側ではなく帝国議会側を支持すれば元老院の決定は覆される、という話に続けて、以下。

しかし、その皇帝の決定も危ぶまれているのだ。それはなぜかと言えば、「アルク・レーダー」が司法長官となったからである。
(中略)
その司法をバルバロッサ側が押えているということは、今後皇帝の裁定すら覆される可能性があるということなのである。
(p106)

ダイ・グ、ピンチ。

円卓の騎士
帝国元老院のメンバー。
恐ろしげな仮面をかぶった騎士(団?)。
イラスト/デザイン自体は1997年の『プラスチックスタイル』のもので相当古い。デジタル処理による金属光沢や、布地のテクスチャ表現などがこの頃のイラストの特徴だった。その後、00年代になると作者はCGを否定するのだが、2013年以後はCG的な透明表現などのオンパレードとなる。が、アニメでのGTMの3DCG化は否定し手描きを貫くなど、作者のCGに対する距離感は面白い。

円卓の騎士に関する設定は次のとおり。箇条書きで。
 『リブート6巻』(p226)
 ・元老院しか知らない騎士達。
 ・魔導大戦ラストに登場。
 ・戦う騎士でなく、一つの目的のために存在。

 『デザインズ4』(p106)
 ・元老院最大の謎。
 ・「エルダー・オブ・ジャッジメント」。
 ・裁きの騎士。

以上を踏まえ、ここからは私の想像メモ。
三色の娘(恐らく皇女・茄里)は本編のなかで、「裏切り者」を処刑するためにノイエシルチス”氷”グループを持ち出すと言っている(NT201402号)。”氷”グループは「ノイエ・エルダー」(デザインズ4p136)。というわけで三色の娘が率いるのはエルダー・オブ・ジャッジメント=円卓の騎士である蓋然性が高い。「裏切り者」はやっぱりジークボゥなのだろうか。三色の娘はジークの親友であるヨーンにも接触する(『デザインズ4』p141)ようだし。

<このデザインの名称/設定の変遷メモ>(私の知る範囲で)
『プラスチックスタイル』では「エンペラーガード」という名称/設定のみ記載。

『デザインズ3』(p38)で「アルカナ・ナイトの古の正装」と設定される。

『リブート』6巻(p226)でたぶん初めて円卓の騎士なる名称が公開。

<このデザインの経緯メモ>
『リブート』6巻(p226)によれば、作者は当初のエンペラーガードという役割を「円卓の騎士」と「アルカナ・ナイト」の二つに分けたのだという。そのため当該のイラストが円卓の騎士で、トランプマークの服がアルカナ・ナイトとなったという経緯らしい。そんなわけでこのデザインは発表から17年経っても本編に出ていない。本編登場まで24年掛かったオリバー・メルシュほどではないにしてもアレな話だ。私としてはかなり好きなデザインなので、本編登場が待ち遠しい。

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No title

「何のための選挙権?!」
あのセリフは印象的でした。
国家論的物語の側面、と言う考察、素晴らしい視点ですね。
システム腐敗の問題点を、権力の片寄り≒民衆の苦しみ、と永野氏が捉えているのを顕かにして頂き、自分には収穫でした。
彼の、古い物から抜け出せない人間への敵がい心も、実はそんな腐敗を危惧しての事なのかも知れません。
永野氏の表現行為から、単に変わり続けるとか、時代に沿うとかのスノビズムとは違う物を感じておりました(いや勿論それも有りますが)。
ォヤジが若者に媚びたくてもがいてるとか、古臭いデザインをドヤ顔で披露してるとかの巷の批判を的外れに思っていたのですが、我が意を得たり、でした。
ありがとうございました。
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