「花の詩女」再上映

2017年6月、「花の詩女ゴティックメード」が全国で再上映。 https://www.dreampass.jp/m342768

【宮城県:6/24上映】
【千葉県:6/24上映】
【千葉県:6/24上映】
【埼玉県:6/24上映】
【大阪府:6/24上映】
【大分県:6/24上映】
【栃木県:6/25上映】
【愛知県:6/25上映】
【京都府:6/25上映】
【岡山県:6/25上映】
【広島県:6/25上映】
【福岡県:6/25上映】
【長崎県:6/25上映】
【熊本県:6/25上映】
【鹿児島県:6/25上映】

システム上、一定数のチケットが売れなければ上映が成立しない。自分の地域以外もどんどん拡散させてどんどん宣伝しよう。今のところ苦戦しているのは長崎、熊本、鹿児島あたり。

一回見た人もまた見よう。見所はカーテンコールやGTMカイゼリン以外にもいろいろある。たとえば岡田斗司夫も驚愕した「キャラの自然な足運び」。永野護が動画17万枚を費やして一体なにを描こうとしたのか、フラットな状態でもう一度見ておいて損はないと思う。

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永野ロボットはいかに女性化したか(2)ハイヒール編

Category : F.S.S.

■ヘビーメタル(HM)のヒール
永野護の描くロボットは女性的である、と言われる。その特徴として最初に挙げられるのはMHやGTMにみられるハイヒール(あるいはピンヒール)であろう。細く高いヒール形状は現在の永野ロボットの象徴であると言ってもよい。というわけで今回は、永野ロボットの足がいかにハイヒール化していったか、というところを振り返りたい。まず最初は『重戦機エルガイム』(1984年)に登場するロボットであるヘビーメタル(HM)について。3種のHMを例に挙げる。

IMG_0841.jpg
↑HMカルバリー。ヘビーメタルの足の基本形がこのタイプだ。ここで紹介する3種のHMのなかでもっともハイヒールには遠いタイプのデザインである。ここでは仮に「三点支持型」と呼んでおく。カカトが後方へ二本に分かれている点がガンダムなどと比べて特徴的だ。片足を三点で支えるこのデザインは「接地性」への配慮であろう。ちなみにこの「三点支持型」のデザインは後の1986年に開始するF.S.S.においてもそのまま踏襲されることになるし、1998年の『ブレンパワード』の足も「三点支持」が基本となっている。

IMG_0840.jpg
↑HMガイラム。これは多くのHMのなかでも例外なほうだ。カカト部分が大きなブロック状のヒール(のようなもの)となっている。このがっしりしたヒール形状も「接地性」に配慮したゆえであろう。本当の意味でのハイヒールと呼ぶにはほど遠いが、永野がこの時点でハイヒール的なデザインに向かっていたことは見て取れる。

mk-II.jpg
↑HMエルガイムマークツー。「三点支持型」タイプをハイヒール化した、「三点支持ハイヒール」。これもHMのなかでは例外のほうだ。カカト部分が細く高いという点ではハイヒールらしいと言えるのだが、三点支持であるゆえ本当の意味でのハイヒールとは言いがたい。

以上のヘビーメタルのなかにはハイヒールと言い切ることのできるデザインはなかった。HMガイラムはハイヒールにしてはゴツすぎるし、HMマークツーは「三点支持ハイヒール」だった。どちらもまだ本当の意味でのハイヒールとは言いがたい。しかしこのHMガイラムとHMマークツーにみられたカカトのデザインが、やがてF.S.S.の時代に入り、本当のハイヒールに進化することになる。具体的に言えば、より細く、より高く、(二本ではなく)一本のヒールという形状に収斂していくことになるのだが、そうなるためには幾つかのステップが必要だった。それは「接地性」という問題を解消(あるいはスルー)するためのステップである。「接地性」こそがロボットのハイヒール化を阻む最大の問題点だった。永野ロボットのハイヒール化の歴史というのは、言い換えれば、永野が「接地性」の問題にどのようにして向き合ってきたかの歴史でもある(大袈裟に言ってみた)。


■モーターヘッド(MH)のヒール
さて、以上のことを踏まえてF.S.S.の話に入る。注目すべきMHを時系列(デザイン日順)で追う。

まず第1話、第2話。この頃のMHは、先のHMカルバリーのような「三点支持型」だった。つまり、最初期のMHたちはハイヒール化とは無縁だったということだ。

1991_03.jpg1991年03月デザイン画(デザインズ3p76)。
↑F.S.S.で注目すべき最初のMHはMHバングドールだ。見ての通り先のHMマークツーの「三点支持ハイヒール」をさらに細く、さらに高くしたカカト形状である。その点では確実にハイヒール化には向かっているものの、定番である「三点支持」路線はこのバングの時点でも変わっていない。余談になるけど、バングというMHはハイヒール型のMHが当然となった時代になってから一度も本編やセル画で描かれていない(たぶん)。もしバングもLEDミラージュやオージェのようにリファインされていたら三点支持ではなく本当のハイヒールになっていたのかもしれないので、そういう妄想からバングの模型作って見るのも楽しいかもしれない。

1991_05.jpg1991年05月デザイン画(デザインズ1p32)
↑少しだけハイヒールらしくなった最初の例は、MHシュペルターだ。HMガイラムのブロック状のヒールからの発展形と言えるかもしれない。ただし、接地性を踏まえヒールは低いし、ヒール幅も広いデザインである。人間の靴のようなヒール形状へはまだ遠い。いや、こういうデザインの靴もあるにはあるのだが。

1991_08.jpg1991年08月デザイン画(デザインズp59)
↑つづくMHクロスミラージュ雌型では、よりヒール靴らしくなる。デザインのテーマが「雌」ということもあり、ようやくここでハイヒールらしいヒールの形が登場となる。ただし、人間の靴でいえば高さ5cmくらいの控え目なヒールであり、さらに、画像では見にくいが、接地性のための「アイゼン」=「予備脚」のようなものがくっついていて、見栄えもやや悪い。ここでもやはり永野は「三点支持」路線を選択しているのである。

なお、クロスミラージュ雌型はハイヒール化という面だけではなく「シルエットの女性化」という面でも重要なロボットであろう。イラストレーターのTHORES柴本が、「クロス・ミラージュ/♀型のデザインが出て来た時に、すごくこれまでとは違うデザインだなって思ったんですよね。(中略)かなり女性的なフォルムになっていたので、なかなかロボットのデザインとして珍しいなって感じたんですね」と言っているように、クロスミラージュ雌型はその後の女性的なロボット(MHエンプレス、MHエンゲージ、MH暁姫など)の雛形となっていると思われる。が、面倒なので検証はしない。
(註)『F.S.S.トレーサー2』


1992_12.jpg1992年12月デザイン画(デザインズ1p51)
↑話を戻す。つづくヤクトミラージュではヒールがさらに高くなる。人間の靴でいえば、7cmヒールといったところか。シルエットはかなりハイヒールらしくなってきたものの、予備脚による「三点支持」路線は継続している。永野にとってそれだけ接地性の問題は大きかった。


ヤクトNT1996年04月号(本編)
↑そしてついに。錨は巻き上げられ、ハイヒールの時代が始まる。MHヤクトミラージュの本編登場時、とうとう予備足はなくなった。永野はあれだけ頑なに拘っていた「三点支持」の安定性を手放したのだ。ロボットの足としての合理性(接地性)や説得力は、美的価値観ーーハイヒールのほうがカッコいい!ーーによって踏み倒されたのであった。これをもってMHのハイヒールのフォーマットは完成したのである。ヤクトミラージュはいろんな意味で特殊なMHだが、永野デザイン史的にみても特別だったのだ。上の設定画よりもヒールは高く、細くなり、完全にピンヒールとなった。人間の靴でいえば12cmヒールくらいだろうか。

永野がこのときに「三点支持」という合理性を捨てたことにもしキッカケがあるとすれば、それはヤクト自体が超巨大で、不合理なロボットだったからかもしれない。ヤクトを見たイアン・ケーニヒ(パイドパイパー騎士団)は、「じょ…冗談だろお…」と言っているが、存在自体が「冗談」なのだから、接地性なんて考えるだけムダである、と。

vサイレン1996年デザイン画デザイン画(デザインズ3p)
↑接地性について補足。上の本編版ヤクトミラージュと同じ1996年、このMHネプチューンも描かれている。見てのとおりヒールがない。それから立て続けに3種類の「ヒールのないMH」が発表されている(註)。永野はこの1996年に、本編ヤクトで「予備足」を、ネプチューンで「ヒール」を取り払っていることになる。いわば「接地性」の呪縛から完全に解き放たれたということだ。永野は「ヒールのないMH」に関して次のように述べている。

戦闘時には猫や馬のように爪先立ちで動いているモーターヘッドにかかとの必要性はあまりないと言っていい。かかとはあくまで休むときに疲れないようにするためのものだから、モーターヘッドにはなくてもかまわないという発想が出てきたこともあるかもしれない。
(デザイン画集『プラスチックスタイル』(1997年) 「エレシス」の項より)強調引用者


余談だけど、「かもしれない」となぜか断定を避けて語るところがこの作者の面白いところで、読者のあいだで語られる「永野護はジョーカー宇宙の観察者に過ぎない説」にもちょっと説得力がでてくる。で、あれだけ「三点支持」や「予備足」による接地性に拘っていた作者が、ここでは「かかとの必要性はあまりない」と真逆のことを言いだしているのが可笑しい。「猫や馬」のような「爪先立ち」という論理を得られたことがハイヒール化を可能にしたようだ。

残念ながら↑のMHネプチューンのデザイン日が「1996年」としか記されていないので、本編ヤクトとどちらが先に描かれたのかは不明だ。いずれにせよ、この時期にヒールのデザイン面で大きな転換があったことは間違いない。
(註)ヒールのないMHは、MHネプチューン、MHエレシス、MHアトール・スクリティ。いずれも『プラスチックスタイル』所収。


1996_12.jpg1996年12月デザイン画(デザインズ1p63)
↑さて、巨大なMHヤクトミラージュにおいて完成したハイヒールのフォーマットは当然、通常サイズのMHにも波及する。つづくMHスピードミラージュにおいても予備足のない完全なハイヒールのデザインが踏襲されている。

1997_03.jpg1997年03月デザイン画(デザインズ3p63)
↑「三点支持」や「予備足」といったデザイン上のリミッターが解除された以上、デザインはより過激になっていく。次のMHエンプレスの足は、もはや「靴」である。ロボットの足ではなく「靴」。人間のショートブーツのようにも見えるが、永野ファッションなのでピンヒールパンプス+ソックス+レギンス(ブーツカバー)の組み合わせであろう(あ、ソックスとレギンスの組み合わせって変か?)。MHエンプレスは「靴」だけでなく、全身がレディース服で出来ている点で特徴的だ。このデザインをもって永野ロボットの女性性は究極まで突き詰められたと言ってよい(註)。エンプレスの着ているレディ―ス服の詳細については前の記事で記した通り。
(註)興味深いのは、MHエンプレスの女性性はガンダムとの関連でこそ理解できる部分がある点。これについてはまた後日。


これ以後のモーターヘッドについては紹介するまでもないだろう。大部分のモーターヘッドがハイヒールとなったのだから。MMエンシーや、MMアウゲ、MHエンゲージシリーズのように、ヒールの細さ・高さはより先鋭化していった。

まとめると、永野ロボットは突然ハイヒールに変わったわけではなかった。その点、読者の前に突如として登場したGTMのスイング関節とは違う。ハイヒール化とはちいさな変化の積み重ねの結果であり、1984年の『エルガイム』から1996年のMHヤクトミラージュまで、約12年を掛けて進行してきたことになる。

以上。

メモ。今回はデザイン画が描かれた順でMHを並べたけど、本編に登場した日順であっても「ほぼ」同じような順になる。

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